訳語・用語の研究  メモラビリア(Memorabilia)について

メモラビリア(Memorabilia)について

新刊『スヴェーデンボリのラテン語』の「文選」IV.は『真のキリスト教』387番からものです。その表題は「第三の印象的な出来事」(Tertium Memorabile)であり、このラテン語の複数形が“Memorabilia”です。なお、先に述べておきますが、「データ(資料)」の言葉はラテン語“data”から由来しており、“datum”の複数形であり、これは動詞“do(与える)”の分詞(「与えられたもの」を意味する)です。それで、このように複数形を考えることはよくあります(「商品」を意味する「グッズ」もgoodの複数形goosです)。

さて、形容詞“memorabilis”は「記憶に値する・記憶すべき・注目すべき」を意味します。この中性形が“memorabilis”であり、この実詞としての意味が「記憶すべき出来事・注目すべき出来事」となります(なお、形容詞が実詞として使われることは、今回の「勉強会」の一部です)。

この言葉はこれまでいろいろに訳されています。古くは「記憶すべき事」(静思社・真のキリスト教)、また「メモ」(アルカナ出版・同書))、「説話」(静思社・結婚愛など)です。

霊界での体験に基づく独特な意味合いを持つ言葉なので「メモ(これは論外でしょう)」や「説話」と訳しては真意を伝えてないでしょう。それで、適当な訳語が定着するまでは「音訳」である「メモラビリア」でよいかなと思っています。

 (鈴木泰之)『SPSC会報』第15号に掲載